長期投資の株をやるうえで、決算短信などの業績・財務をよめるようになるのは重要。
中でも「キャッシュフロー」という概念がありますが、初心者からすれば、「利益」との違いが、なかなか難しいですね。
そこでこの記事では、キャッシュフロー(CF)について、詳しく説明していくことにします。
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みなさんの話におきかえてみましょう。
たとえばみなさんが大学を卒業して、無事に就職。
初日の仕事を8時間したとする。
しかしそのぶんの給料というのは、その日のうちに、もらえるわけではありませんよね。
給料日という形で、月に1回だけ、まとめてお金をもらうのが基本です。
とはいえ初日に8時間仕事したことで、そのぶんの給料は、将来もらえるものとして確定しているわけです。
正確に言うと、毎月20日働いて月収20万円もらえると考えると、1日の給料は1万円。
その1万円というのが、すでに将来もらえるお金として確定している。
これが「利益」です。
そして毎月給料日になったときにもらえる20万円、これが「キャッシュフロー」になるわけです。
おわかりいただけたでしょうか?
ようするにキャッシュフローというのは、実際にお金をもらった時点で確定するもの。
これをもとに作られる会計書が、キャッシュフロー計算書(CF)。
逆に利益は、働くことでお金をもらう権利(売掛金)がついた時点で、確定するもの。
これをもとに作られる会計書が、損益計算書(PL)なわけです。
会社で考えると、いろんな経費をひいたあとの営業利益と、営業キャッシュフローがあてはまる。
そういう差なわけですね。
私も実際に事業をやっている身なのでわかりますが、企業の取引では、利益が確定してから実際にお金をもらえるのが1か月、2か月ほど先送りになることは、ザラにあります。
みなさんの給料と同じように、そのときに確定したお金が、先送りの入金になる。
これを「売掛金」とか「売掛債権」と言ったりします。
そしてここからが重要ですが、この売掛金の支払いというのは、不履行になることもある。
みなさんだってサラリーマンとしてしっかり働いたものの、会社が不義理を働いて、給料日にお金を渡してこない可能性がありますよね。
そのような場合、いまの会計書で営業利益がプラス計上されても、将来の営業キャッシュフローではゼロ計上になります。
こういった背景から「営業利益」よりも、実際に手元にあるお金で利益を判断できる「営業キャッシュフロー」を、重要視する目線がうまれているわけです。
あくまで利益は「将来もらえるお金」というタダの約束事なだけであって、実際にまだキャッシュフローとして、お金をもらったわけではない。
そこに注意しないといけません。
ほかにも、売掛金は会社側の自己申告であることも注意すべき。
売上や利益を多く見せて粉飾するために、架空の売掛金を計上している企業も、なかにはあります。
上場企業ほどこれは顕著で、私たち投資家をだまして株価操作するために、しばしばこういうことをやるわけです。
この点も営業キャッシュフローを見れば解決。
営業利益がプラスでも営業キャッシュフローのマイナスになっている会社は、投資をひかえたほうがいい。
そんな判断ができますね。
<営業利益で投資対象を判断するデメリット>
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この2点の問題は営業キャッシュフロー、つまり実際の入金を見ることで解決できる。
イメージできたでしょうか?
まあハナから利益なんて概念なくして、キャッシュフローだけ見てればいい話。
しかし面倒くさいことに、法律上は利益もキャッシュフローも、どっちも会計書として計上すべきものとして決まっています。
その理由のひとつに、国の横着。
国はキャッシュフローからではなく、利益から税金をとるようにしています。
なぜなら利益はキャッシュフローよりも、すばやく会計書に計上されるためですね。
会社からすばやく税金をかっさらうことができる。
そういう利点があるから、国としても利益という概念は、なにがなんでも崩したくないわけです。
国の意地汚さがでるところですが、まあそういうことなんですね(笑)
そして利益も悪いことばかりではなく、「現金がそのうち入ってきますよ」という速報としての使い方ができます。
キャッシュフローとして将来お金が入ってくると見込まれたら、すぐに利益として計上し、投資家に「上方修正」などの形で、情報を届ける。
そういう意味合いも、あるわけですね。
なんであれ、利益がプラスでも、キャッシュフローがマイナスの会社への投資はさけるべき。
これを基本におさえておきましょう。
簡単にプレサンス(3254)で例を見てみましょう。
2019年まで年々、売上、営業利益、純利益、いずれも右肩上がりですが、営業キャッシュフローはマイナス計上。
銀行からお金を借りて財務キャッシュフローで補うなどしていますが、こういう銘柄は、初心者は基本的には手出し無用ですね。
実際2019年12月に、横領容疑で社長が逮捕される不祥事が発生し、株価が大下落しています。
月足チャートがそこそこ右肩上がりなので勘違いしますが、「やがて財務の歪みはなんらかの形で株価に現れる」という例だと思ってください。
チャートは悪くなくても、業績が悪いからエントリーしない。
複数の視点から攻めれるのが、株の良いところですね。
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