長期投資だけやるぶんには、会社のファンダメンタル分析は有価証券報告書(有報)や四季報を見る程度で十分です。
しかし短期トレードをやる場合は、決算短信(略して短信)というのも重要になってきますね。
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いわゆる株価が動く「材料」とよばれるものの中で一番重要なのが、この決算短信。
短信は各銘柄ごとに年4回公開され、そのたびに株価が大きく動く原因となります。
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丸亀製麺の株主優待で人気のあるトリドール(3397)は、2019年11月13日の決算短信で、大きく株価が上昇。
長らくトリドールは失望されて株価がさがっていました。
しかし決算で発表された業績が、ガイダンス(会社予想)やコンセンサス(市場予想)をこえて、一気に改善されました。
このように短信の発表ごとに、投資家の期待と失望がくりかえされ、株価のトレンドは形成されていきます。
短信の公開時期は会社によって違いますが、特に以下の時期に集中。
これは、多くの会社が本決算を3月としているためです。
短信の発表は、決算から45日以内におこなわれるのが慣例。
たとえば本決算が3月であれば、そのぶんの決算短信は4月後半~5月前半に発表されますね。
四半期(3か月)ごとの短信も同様。
年に4回ある決算に対して、1か月~2か月おくれて4回の短信が発表され、株価が動きます。
<決算の種類>
年に4回ある決算 → 第1四半期決算、中間決算、第3四半期決算、本決算(それぞれ1Q、2Q、3Q、4Qとも言う)
中間決算 → 第2四半期決算(2Q)とも言う
本決算 → 第4四半期決算(4Q)、通期決算とも言う
決算短信の業績発表が株価を大きく動かし、その後の株価の長期トレンドを作る材料になる。
このことは、長期投資家もよく覚えておくといいでしょう。
決算短信では、1年のそれまでの業績が積み重ねで表示されます。
以下、本決算12月の資生堂(4911)の例。
1Q → 第1四半期の業績だけ
2Q → 第1四半期+第2四半期ぶんの業績
3Q → 第1四半期+第2四半期+第3四半期ぶんの業績
4Q(本決算) → 年間の業績
本決算(4Q)で年間の業績がでて、次年度の第1四半期(1Q)ではリセットして次年度の第1四半期のみの業績、という感じに。
また決算短信の業績は、よく前期(1年前の同時期)と比較されて表示されます。
(クリックで拡大)
こちらは資生堂(4911)の2018年・2Qの決算短信。
2017年の2Qの業績と比較して、2018年の2Q業績が表示されます。
1年以上を見据えたグロース長期投資では、単純に売上や純利益といった業績が年々右肩あがりかどうか、つまり成長率がプラスになっているかが重要です。
● グロース株・バリュー株ってなあに?(グロース株投資の解説) |
今回の資生堂の場合は、経常利益が2017年から2018年にかけて、341億円から728億円に成長。
前年と比べて112.9%の業績変化率(成長率)で、長期投資するうえで非常によい成績であることがわかります。
しかし1年未満の短期トレードになると、この成長率よりも、「発表された業績が、ガイダンス(会社予想)やコンセンサス(市場予想)をこえるか」が大切になります。
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ガイダンスやコンセンサスは、四半期ごとに設定されることも多いです。
株価は、実際に業績が発表されていなくても、前もってガイダンスやコンセンサスで予想された業績をおりこんで、変化していきます。
そのため決算短信発表後、前期と比べて業績がよくても、ガイダンスやコンセンサスを下回る業績だった場合は、株価が落ちてしまうことも多いですね。
これを「材料出尽くし」とよびます。
良材料の出尽くし → 前年比で業績がよくても、すでにガイダンスやコンセンサスで織り込まれているため、株価がさがる現象
悪材料の出尽くし → 前年比で業績が悪くても、すでにガイダンスやコンセンサスで織り込まれているため、株価があがる現象
2019年の資生堂の場合、2Qも3Qも前年度にくらべて経常利益はさがっています。
しかし2Qはコンセンサスを上回る業績だったため、2Q発表後は株価がギャップアップつきで上昇。
また3Qはコンセンサスを下回る業績だったため、3Q発表後は株価がギャップダウンつきで下降。
これらガイダンスやコンセンサスも、決算短信の発表によって、刻々と変化します。
特にガイダンスの業績予想をひきあげることを上方修正、ひきさげることを下方修正と言います。
上方修正 → 会社が業績予想をひきあげること(株価はあがる)
下方修正 → 会社が業績予想をひきさげること(株価はさがる)
まともな会社であれば、ガイダンスに変更がある場合は、決算短信で一緒に報告します。
(クリックで拡大・2019年3Q・資生堂4911の決算短信より)
ガイダンスやコンセンサスのない銘柄は、進捗度で業績の良し悪しを判断されることも多いです。
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この進捗度も、多ければ多いほどいい。
業種にもよりますが、普通に考えて、以下のような基準です。
ガイダンス、コンセンサス、進捗度は、業績とともに、各証券口座のアプリ・サイト、ヤフーファイナンス・株予報などの株サイトで閲覧することが可能。
通期の業績予想に変化があった場合も、三角形の位置などから、その様子を見ることができます。
(クリックで拡大・SBI証券のスマホ株アプリでは「業績」の項目で閲覧可能)
まとめると、株価のあがりやすい良い決算というのは、以下のとおり。
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逆に、以下のような銘柄は、買うのは躊躇されます。
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決算短信を使って短期トレードをする場合、初心者は決算短信を発表したあとの値動きに着目するといいでしょう。
たとえば2019年11月に急騰したトリドール(3397)。
過去チャートでは2017年に最高値4200円の株価をつけたあと、2018年に半値を割って1700円付近まで下落。
それ以降も決算短信で、コンセンサスを下回る悪い業績が発表されつづけました。
しかし通期ガイダンスが大幅増益なこともあり、1700円を割ることはなく、2500円のあいだでレンジを形成。
失望からコンセンサスも低めに設定され、悪材料がでまくって出尽くしになり、「それ以上は株価はさがらない」と読めます。
これ以上さがらないなら、あとはあがるしかない。
そんなわけで、数か月規模の中長期で業績回復を期待して、この段階から買いをいれておくのも、ひとつの選択肢になりますね。
トリドールの丸亀製麺は人気な外食優待ですし、それも買いの後押しをします。
もうひとつ例。
クスリのアオキ(3549)は、2019年9月26日発表の決算短信で、翌日の9月27日にギャップダウンで大きく株価をさげました。
その値幅は終値ベースで8190円から7640円。
翌営業日の9月30日にはさらに7360円まで下落。
2日間で、ギャップダウンつきでおよそマイナス10%の下落率です。
(クリックで拡大・クスリのアオキ3549・2019年9月発表の決算短信)
しかし決算短信を見てみると、コンセンサスを少し下回っただけで、業績はさほど悪いわけではないし、ガイダンスに変更があるわけでもなし。
極端に市場が反応しすぎたと考え、逆張りで買いをいれる判断もできますね。
実際にこのあと株価は上昇。
トリドールとクスリのアオキで例をだしましたが、実際に決算短信を使って短期トレードをすると、だいぶギャンブルになります。
やる場合は、くれぐれも資金管理には気をつけたいところです。
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