このページでは、株価の割安性・割高性をはかるバリュー指標の代名詞、PER(株価収益率)について解説していきます。
目次
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PERは、時価総額と純利益を使って計算します。
PER=時価総額÷純利益 |
たとえば時価総額1000億円、純利益50億円の株であれば、PERは20倍。
このようにPERは、単位に「倍」をつけます。
● 株にはどんな種類がある?(復習記事・時価総額のわかりやすい解説) ● 会社の利益の種類(復習記事・純利益についての解説) |
時価総額と純利益について、おさらいしておきましょう。
時価総額は、発行株数に株価をかけたもの。
純利益とは、会社に最終的に残る手元のお金のことでしたね。
時価総額 → 「発行株数×株価」で、会社の価値(企業価値)を示す数字
純利益 → 売上からあらゆる費用をひいた、最終的に会社に残るお金
このようにPER、PBR、配当利回りなどの指標は、株価と業績(損益計算書・貸借対照表といった財務諸表の数字)をリンクさせた「株価指標」となります。
今回ふれるPERについても、時価総額(株価)を毎期の純利益で割ったもの。
ひたらくいえば、会社の稼ぎに対して、株価が安いかを見る、バリュー株投資指標なわけです。
なお、PERと一緒に覚えておきたいのがEPS(一株あたり純利益)。
純利益を発行株数で割ることで、EPSがでてきます。
そして株価をこのEPSで割ることでも、PERがでてきます。
つまり、以下のように。
PER=株価÷EPS=時価総額÷純利益 株価×発行株数=時価総額 EPS×発行株数=純利益 |
株価もEPSも、それぞれ時価総額と純利益を発行株数で割ったものですので、計算のかわりに使えるわけです。
EPSも、相場の世界ではわりと話題になる概念です。
しっかり覚えておきましょう。
PERは小さいほど割安で株の買い時、大きいほど割高で株の売り時、と判断されます。
ではどれくらいで小さく、どれくらいで大きいと言えるのか?
さまざまな株を総合すると、平均的なPERは15倍。
PER8倍以下になれば小さいと言え、買い時。
PER30倍以上になれば大きいと言え、売り時です。
ただ、これらはあくまで一般論。
その銘柄の業種や時価総額、為替の影響をうけやすいかなどで、PERの妥当値はだいぶ違ってきますね。
(クリックで拡大・2019年OLCの有報・PERの確認)
2019年時点、OLC(オリエンタルランド・4661)のPERは、2018年からずっと40倍以上と高いままですが、月足株価チャートは上昇トレンドを形成。
場合によっては、PER100倍の銘柄も珍しくはないのが現実です。
またPERはその株の成長率、つまり利益の増減によっても、妥当値がだいぶ違ってきます。
年間の純利益成長率が10%あればPER25倍でも妥当ですし、成長率30%となればPER50倍でも妥当と言えますね。
逆に成長率がマイナスであれば、PER8倍でも買うのは抵抗があります。
なぜならPERは、株価を毎期の利益で割ったものだからなんですね。
利益は毎期ごとに変わっていきますので、それに応じてPERも大きく変わります。
ようは、短期的な指標になりがちなわけです。
増益すればPERの分母が大きくなってPERはさがりますし、逆に減益ならPERはあがるわけです。
そんなわけで、うまい投資家ほどPER単独で株の売買をするということは、まずありません。
毎年成長率が安定していて、毎期の純利益の変動が大きくない大型株では、PERはよく使われるでしょう。
逆に成長率の大きい小型株のような銘柄では、PERに成長率をもりこんだ株価指標「PEGレシオ」が使われます。
ここまでバリュー指標として代表的なPERを紹介してきたわけですが、じつは初心者だましもいいところ。
実際に使いこなそうとするほど、だいぶ複雑になることに注意です。
まあいろんな株を見てきた私の経験上ですが、PER5倍未満というのは珍しいですので、感覚として買っていいものが多いですね。
逆に50倍とか超えてくるのは、大概怪しくなってきます。
なんであれ、決してPERだけで判断するのではなく、別の売買基準とくみあわせることが大切です。
よく言われるPERの話として、たとえば「PER10倍なら、10年間で元本を回収できる」というナゾ理論ですね。
時価総額100億円、純利益10億円なら、PERは10倍。
純利益10億円を10年間くりかえせば、純利益の蓄積が時価総額においつくので、みなさんの投資資金も回収できる。
そんなトンデモが、いろんなネット記事や書籍を見ていると、じつに多いです。
はっきり言いますが、こんなものはデタラメです(笑)
時価総額も純利益も、その都度どんどん変わっていきます。
単に理論上、会社の純利益の蓄積が当時の時価総額においつくというだけであって、みなさんの稼ぎ(キャピタルゲイン)が保証されているわけではありません。
「PERの倍数と同じ年数ぶん株を持つと、みなさんは元本を回収できる」というデタラメ理論を、信じないようにしましょう。
「純利益は株主が全部好き勝手にできる」という記述もよく見ますが、あくまでそれは会社が株主還元するよう経費をほとんど使わず、なおかつ純利益すべてを配当金にすることに、株主の過半数以上が賛成したときのみ。
実際そんなことはありえないですので、やはりこれも嘘ですね。
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