株には「需給」というものがあります。
どれくらいその株を買いたい人がいるのか。
どれくらい売りたい人がいるのか。
そういった株の需要と供給(需給)をあらわす指標のひとつとして、信用残・信用倍率があります。
目次
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信用取引では、株価があがることで利益になる買い(ロング)のエントリー。
これ以外にも、株価がさがることで利益になる売り(ショート)でもエントリーできることは、空売りの記事でも解説したとおりです。
その銘柄に、どれくらい信用取引の買いや売りが入っているかというのは、じつは見ることができます。
それが「信用買い残・信用売り残」と言われる信用残。
そして信用倍率とは、買い残を売り残で割ったものです。
信用買い残 → 「買い残」とも。信用取引の買建玉の枚数。その銘柄がどれくらいロングされているかを示す。
信用売り残 → 「売り残」とも。信用取引の売建玉の枚数。その銘柄がどれくらいショートされているかを示す。
信用残 → 買い残と売り残のこと。
信用倍率 → 買い残を売り残で割った数値。
(信用残は証券アプリで見れる)
2019年8月19日時点のバンナムHD(7832)を例にすると、売り残は392600、買い残は182800。
信用倍率=買い残÷売り残 182800/392600=0.47 |
買い残を売り残で割って、0.47倍という数字がでてきます。
これが信用倍率(貸借倍率)となります。
信用倍率と信用残は、毎週1回更新されます。
証券アプリでは、だいたい火曜日の17時に。
売り残より買い残が多いと、信用倍率は1以上に。
逆に買い残より売り残が多いと、信用倍率が1以下になることに注目しましょう。
バンナムHDの場合、買い残より売り残のほうが多いので、信用倍率は1倍以下ですね。
信用倍率が1倍以上 → 買い残>売り残
信用倍率が1倍以下 → 売り残>買い残
では信用残と信用倍率は、どのように株取引にいかすのか?
初心者の方は、買い残が多いほうがその銘柄に買いが入ってて株価があがりやすい、と考えるかもしれません。
じつは、これがまったく真逆。
買い残が多いほうが株価はさがり、売り残が多いほうが株価はあがる傾向があります。
つまり、以下のように。
継続的な信用倍率1倍以上 → 株価がさがりやすく、長期の空売りに向く
継続的な信用倍率1倍以下 → 株価があがりやすく、長期の買いに向く
なぜこうなるかというと、信用取引には決済期限があるためです。
空売りの記事で、信用取引の主流である「制度信用取引」は、決済期限が6か月であると説明しました。
● 信用取引の決済期限に気をつける(復習記事) |
つまり買い残として表示されている買建玉は「すでにエントリーされた買いポジ」ですので、半年以内にエグジットで売らないといけないポジ。
逆に売り残として表示されている売建玉は「すでにエントリーされた売りポジ」。
半年以内にエグジットで買い戻さないといけないポジ、ということになります。
買い残 → 将来の売り圧力になる
売り残 → 将来の買い圧力になる
こういった理由から、買い残の多い信用倍率1以上の銘柄は、株価がさがりやすくなる。
売り残の多い信用倍率1以下の銘柄は、株価があがりやすくなるわけです。
バンナムHD(2019年8月19日)の信用倍率も0.47倍と、倍率1倍以下で買い残より売り残のほうが多い状態。
しかし長期株価チャートは右肩あがりとなっています。
もうひとつ長期の例として、こちらは資生堂(4911)。
2017年中盤~2018年中盤の信用倍率(青線)が1倍ライン(紫線)の下にいるとき、株価は26週移動平均線(赤線)のうえで、上昇トレンドを形成。
そして倍率1倍をこえたあとに見事株価も天井をつけて売り、となっています。
資生堂は、非常にわかりやすい例でした。
こういった基準で長期投資をするだけで、1年で株価は「3000→9000」の3倍に。
過去の信用残や信用倍率は、証券ツールの時系列データで見れるほか、株探、日経新聞WEB、ケンミレといったサイトでも見れます。
グーグルで「銘柄名 信用倍率(信用残)」と検索してみましょう。
以下、株探でのオリエンタルランド(4661・2019年8月)の例。
(クリックで拡大・株探より)
このように、ずっと信用倍率1倍以下が続いている状態を「売り長」と言います。
売り長 → 売り残が多くて、信用倍率1倍以下がずっと続く状態。株価は上昇トレンドを形成しやすい。
買い長 → 買い残が多くて、信用倍率1倍以上がずっと続く状態。株価は下降トレンドを形成しやすい。
ずっと売り長で上昇トレンドがつづく株には、長期で買いをいれてみるのが戦略になります。
資生堂同様、オリエンタルランドも連続的に信用倍率1倍以下がつづく期間は、26週移動平均線の上で上昇トレンドを作っています。
なお、信用倍率を根拠に長期投資するのであれば、やはり日経225やTOPIX100に採用されている大型株がオススメになります。
これらの大型株は制度信用取引で空売りができ、なおかつ毎日出来高があって、買い残も売り残もたくさん。
そのため、信用倍率が機能しやすいです。
(クリックで拡大・2020年時点・TOPIX100銘柄)
逆に制度信用の空売りができない小型株では、売り残がそもそもありませんので、信用倍率を根拠にトレードすること自体できません。
(SBI証券株アプリより・1728ミサワ中国の例)
空売りのできる銘柄であっても、買い残が5000、売り残が1000しか入ってないような株の信用倍率も、あまりあてにしないほうがいいですね。
取引されることで、すぐに倍率が大きく変動してしまうからです。
信用倍率は、買い残・売り残がそれぞれたくさん入っている銘柄で使うことをオススメします。
目安として、それぞれ最低5万以上はほしいところです。
時価総額1000億円以上・大型株 → 信用倍率がトレードの根拠として使いやすい
時価総額1000億円以下・小型株 → 信用倍率がトレードの根拠として使いづらい
初心者は買い残・売り残ともに5万以上ある銘柄でのみ、信用倍率根拠の投資をしたほうがいい
● 株にはどんな種類がある?(参考記事・大型小型の違い) |
大型株で信用倍率1倍以上の買い長・月足下降トレンド銘柄を空売りする
大型株で信用倍率1倍以下の売り長・月足上昇トレンド銘柄を買う
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