ギャンブルの代表的手法と言われるマーチンゲール法。
いわゆる「資金管理」のひとつの手法になりますが、相場のナンピンとくみあわせると、これがまた非常に有力になります。
目次
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まずはマーチンゲール法について、簡単に説明。
簡単に言えば、ギャンブルで負けたら、元々かけていた金額の2倍をかけて次回のギャンブルにいどむ、というもの。
たとえばブラックジャックやバカラなど、初手で1万円を投下して負けてしまい、1万円が没収となった。
そうしたら次は、2万円を投下。
それにも負けたら、次は4万円、次は8万円、16万円。
こんな感じに、負けるごとに投下資金をどんどん2倍にしていく。
1回でも勝てば、それまでの負けをすべて取りかえせるので、原理上は負けない、というものです。
それぞれのゲームの攻略法と、この資金管理の手法を組み合わせることで、ギャンブルはより勝率の高い稼ぎ方ができるようになります。
相場というゲームでマーチンゲールを応用するなら、1回ごとに損切りするのではなく、ひとつの銘柄のナンピン(無限ナンピン)に使うのがオススメです。
適切な損切りに慣れていない人は、損切り貧乏におちいりがち。
「ナンピン+マーチンゲール」の手法は、そんな損切り貧乏な人にむきますね。
損切り → 含み損のポジションをエグジットして損失確定すること
損切り貧乏 → 損切りの連続で、どんどん投資資金がなくなっていく人のこと
ナンピン → 含み損の株を追加で買い増す(買い下がる)ことで平均取得単価をさげること
こちらは初手購入から株価5%下落ごとに、マーチンゲール式で買い増ししていった場合の基本データ。
5%下落・10%下落・15%下落と、初手株価から5%下落ごとにナンピンの買い付け資金を、どんどんふやしていきます。
たとえば初手株価からマイナス25%の株価まで買い増すなら、必要ナンピン回数は5回。
資金は初手1に対して、トータル63を用意すればいい。
5%下落ごとの買い付けの場合、5回分のナンピン資金を含めて、含み損率はマイナス5.2%。
トータル投資額63に対して含み損は3.3、評価額(現行の資産価値)は59.7となる、というのが基本。
これだけではパッとしませんね。
具体的に見ていきましょう。
2015年~2016年の双日(2768)の例。
このときの株価は高値300円あたりから安値200円まで下落。
ここでマーチンゲールすると仮定したときのシミュレートです。
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初手の買いは株価300円のときとする
買える最小単位である100株から開始するとして、300×100の資金3万円から投資開始
株価が初手マイナス5%の285円になったところで、1回目のナンピン
基本データ上は初手3万円の2倍である資金6万円を追加投資して、トータル投下資金は9万円へ
株価285円にて6万円ぶんで買える株数は210株
しかし実際は100株単位で売買するため、10株は端数切り捨てにして57000円で200株の買い増しとし、トータルの株数は300株に
以降、株価270円・2回目のナンピンでも、ナンピン1回目6万円の2倍である12万円(実際は108,000円)を追加投下
投下額はトータルで21万円(実際は195,000円)になり、購入株数はトータル700株
このように初手を最小単位の株数で開始してナンピンするときは、マーチンゲールの基準値の単位(理想値)に対し、実際に投下する資金量や買う株数にズレがでてくることに気をつけます。
そこは端数切り捨てや四捨五入で、調整していくことになりますね。
株価がどんどん下がるなか買い増すので、マーチンゲールの単位に対して、買える株数がふえることも忘れてはならない点ですね。
1回目ナンピンの基準値2に対して200株の購入に対し、5回目ナンピンでは基準値32に対して4,200株の購入。
5回ナンピン時点で、トータル株数は「100+200+400+900+2000+4200」の7,800株になります。
この5回目までナンピンするときにかかるトータルの金額は、およそ189万円。
実際はナンピンごとに買う株数を端数切り捨てしているので、およそ184万円の投下ですみます。
トータル投下資金は、ナンピンごとの買値と株数をかけた後、全部たして計算できます。
初手が3万円ですので、結果としておよそ63倍の資金量。
つまり5回目までナンピンすることを考えるなら、初手の63倍の資金が必要になる、というのを頭にいれておきます。
そこから逆算して、初手で投下する資金も考える。
たとえばトータルで投資にまわせるお金が630万円までなら、初手はその63分の1である10万円まで、ということですね。
また5%下落ごとに買い増しという条件なら、含み損率は5回目のナンピンを終えた時点でマイナス5.2%(購入株数の端数処理を考慮しない理想値)に。
この含み損率は、以下の2通りで計算できます。
現行株価と平均取得単価の差額÷平均取得単価
現行評価額とトータル投下資金の差額÷トータル投下資金
平均取得単価から見ていきましょう。
平均取得単価は「トータルの投下資金額÷トータルの株数」で計算可能。
5回ナンピン時点で、トータル投下資金は1,849,500円、トータルの株数は7,800株。
「1849500÷7800」で、平均取得単価がでる(およそ237円)。
そしてそのときの株価は225円ということで、含み損率(現行株価と平均取得単価の差額÷平均取得単価)は「{225-(1849500÷7800)}÷(1849500÷7800)」で計算でき、-5.11%とでる。
237円投下して-12円(-5.11%)の含み損という状態。
買う株数の端数処理をしなかった場合の理想値である「マイナス5.2%」とおおむね一致となります。
トータル投下資金に対する損失割合も「現行評価額とトータル投下資金の差額÷トータル投下資金」で計算できます。
現行評価額は「現行株価×トータル株数」なので、「225×7800」で1,755,000円。
トータル投下資金は1,849,500円。
「(1755000-1849500)÷1849500」を計算すると、含み損率はマイナス5.11%とでてきて、やはり一致しますね。
184万円のトータル投下に対して、175万円の評価額。
94,500円(-5.11%)の含み損という状態です。
今回双日(2768)は、さらに200円以下までさげています。
そのためナンピンを5回で終わる場合、この94,500円は損切り(もしくは塩漬け)で終わることになります。
しかし初手からマイナス25%の株価下落があっても、マーチンゲール・ナンピンを使うことで、このように全体投資資金の184万円に対しておよそ9万円の損失(-5.11%)ですむ。
だいぶ損失額を限定できます。
そして、そういう安心感につながる脳内シミュレーションが、相場に資金投下するまえに重要となるわけです。
投資に費やせる金額はトータルでどれくらいか
どれほどの下落幅を前提に買い下がるか
この2つを考慮したうえで、初手で投下する金額をきめていきます。
なお株では、大型株でも最高値から半値を割ることはめずらしくありません。
つまり、最高値から値幅マイナス50%という事態ですね。
それを想定して投資するなら、5%下落ごとの買い増しだと、ナンピンを10回目までやる必要がでてくる。
基本データに照らしあわせると、ナンピン10回の場合、累計投下資金は初手1に対して2047。
双日(2768)の初手3万円の投資でも、累計投資資金が2047の3万倍で6141万円ほど必要になることに気をつけましょう。
この金額を多いと感じるのであれば、前もって以下の対応策をとります。
初手の金額をへらす
ナンピン回数をへらす(損切り水準をあげる)
買い増す値幅を広げる(5%下落ごとの買い下がりではなく、10%下落ごとの買い下がりに切り替えるなど)
双日(2768)の場合、買い増す値幅を5%下落ごとから10%下落ごとに広げると、以下のように。
双日は株価200円あたりまでの下落ですんでいますので、10%下落ごと買い下がりの場合は、株価270円、240円、210円のナンピン3回までやっていればいいことに。
トータル投下資金も初手3万円に対して45万円ほど(購入株数の端数処理で、正確には43万5000円)ですむことになります。
このようにナンピン買い増しの値幅を広げることで、ナンピン地獄におちいるのを対処可能。
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ナンピンの値幅を変えても、各ナンピン回数ごとの投下資金単位に変化はありません。
ただし含み損率は変化しますので、注意が必要です。
初手購入時の株価の半値までナンピンするのであれば、5%下落ごとはナンピン10回する必要があり、損失額はトータル投下額の-7.83%。
初手1万円、トータル2047万円投下するなら160万円の損失。
それに対して10%下落ごとではナンピン5回する必要があり、損失額はトータル投下額の-12.45%。
初手1万円、トータル63万円投下するなら7.8万円の損失ですむ。
ナンピンの値幅を広げると損失率が大きくなるが、トータルの投下額や損失額自体はおさえられる。
そんなわけで初心者が相場でマーチンゲールするなら、このようにナンピン値幅を広げるのがオススメですね。
マーチンゲールであれば「10%下落ごとに買い増し、株価が最高値から半値割りあたりで撤退」というのは、妥当なラインではないでしょうか。
マーチンゲール・ナンピン投資法は以下のことを守ることで、さらに勝率はあがるでしょう。
大型株・ディフェンシブ株・内需株や日経平均・ダウ平均など、ボラティリティの少ない銘柄・指数でのみ使う
無限損失回避のため、空売り(ショート)には使わず、買い(ロング)にのみ使う
テクニカルやファンダなど、株の攻略法と併用する
● 景気敏感株とディフェンシブ株の違い(参考記事) |
今回の記事で重要なことは、ナンピンしていった場合、損がいったいどれくらいになるのか?
トータルでの投下額は?
そういうのをあらかじめイメージできると、安心感がうまれる。
すると相場もうまくいきやすい。
そういうことですね。
この記事をとおして、それらがぼんやり見えてきたのであれば幸いです。
今回は5%、10%下落ごとのマーチンゲール・ナンピンでシミュレートしましたが、別のナンピン手法や資金管理手法も、もちろんあります。
基本的な計算方法はこの記事でひととおりのせてきましたので、興味があって自分でもシミュレートしたいという方は、ぜひその足掛かりにでもしてください。
やはりこういうデータは、自分で作ってみて納得できる部分も多いです。
エクセルなどを使って、いろいろ自作してみるのがオススメですよ。
自分で検証したデータは投資根拠として大きくなりますし、相場をやっていくうえでの自信や安心感につながります。
こちらは公式として使えるので、ぜひ有効活用してください。
投下額、購入株数、含み損、それぞれ初手に投下する金額を掛け算すれば、そのまま使えます。
購入株数の端数処理を考えなければ、どの株価で試してもこういう結果になります。
特にトータル投下資金(累計投下額)と含み損は、資金管理・メンタル管理上よく見ておくべきでしょう。
多くの人がナンピンで負けるのは、このようなデータ検証を厳格にしないから。
データ検証でしっかり数字をだして、その通りにトレードすれば、あわてふためくこともありません。
しょっちゅうナンピンをせず、都度の投下額と買い増し地点を、前もって厳格に決めておく
マーチンゲールであれば、自分が投資にまわせる最大金額から初手の金額を、前もって決める
3回ナンピンするのであれば、初手は最大資金の15分の1におさえておく
5回ナンピンするのであれば、初手は最大資金の63分の1におさえておく
ふわふわした理由で、投資金額を決めてはいけない
ナンピンもやるなら戦略的に。
そこからすでに、資金管理がはじまっています。
マーチンゲール・ナンピン投資法によって、含み損になってもあわてることなく、ある程度ポジションを放置しておける精神的余裕がうまれます。
こういった資金管理のデータを前もって検証しておくことは、相場をやるうえでのメンタルコントロールで重要です。
見落としがちな点ですので、ぜひ普段から注意するようにしてください。
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